TORAST™-H Tip - 特長
低吸着ピペットチップ / TORAST™-H シリーズ
塩基性化合物(イミプラミン)の吸着試験
LC/MSによるイミプラミン(log P:4.28, pKa:9.2)の吸着結果を示します。200 µL用および10 µL用チップにおいて、他社製PPチップではTORAST™-H Tipに比べピーク面積比はそれぞれ74%および8%となり、顕著な吸着が認められました。
Sample | Imipramine (100 ng/mL) | Mobile Phase | 10 mM Ammonium Acetate in Water : MeCN=40 : 60_Isocratic flow |
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Instruments | Nexera-i , LCMS-2020 | Flow Rate | 0.2 mL/min |
ミオグロビン (≒8.5 pmol/µL) のトリプシン消化物による吸着試験
保持時間が約 14 ~ 18 分に検出される疎水性の高いペプチドは市販の PP 製チップへ吸着しています が、TORAST™-H Tip では顕著な吸着抑制が確認されました。
検量線への影響
他社製 PP チップを用いて作成した検量線の傾きは TORAST™-H Tip10 に比べて大きいことから、低 濃度試料になるにつれ他社製 PP チップへの吸着が顕著であることが示唆されました。
Sample | Basic Compound |
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Instruments | Nexera-i , LCMS-2020 |
Mobile Phase | 10 mM Ammonium Acetate in Water : MeCN=40 : 60_Isocratic flow |
Flow Rate | 0.2 mL/min |
ピペッティング回数の影響
ここではピペッティング(サンプルの採取/吐き出し)回数と LC/MS で得られた面積値を示します。
他社製 PP チップではピペッティング回数に伴い面積値が著しく低下しているのに対し、TORAST™-H Tip10 での面積値の変動は極めて少ない結果となりました。
Sample | Basic Compound (10 ng/mL) |
---|---|
Instruments | Nexera-i , LCMS-2020 |
Mobile Phase | 10 mM Ammonium Acetate in Water : MeCN =40 : 60_Isocratic flow |
Flow Rate | 0.2 mL/min |
低濃度・小容量試料の吸着メカニズム
吸着現象は低濃度・小容量試料において顕著に生じ、そのメカニズムには試料の容器への接触面積(吸着点)が大きく関わっています。
濃度を上げた際は接触面積が変わらないため、接触面積辺りの吸着量も変動しません。そのため、溶質が増えた分だけ吸着によるロスの割合が少なくなります。
また、容量を5倍に増やした際は溶質も5倍に増えますが、接触面積は5倍になるわけではありません。
そのため、溶質の増加量と接触面積の増加量の差だけ、吸着によるロスの割合が少なくなります。
一連の試料調製をイメージした吸着試験
サンプルの試料調製が 1 ステップになることは稀であり、数ステップを要するのが一般的です。
そこで、TORAST™-H Bio Vial、TORAST™-H Tip200、TORAST™-H Tip10 を使用し、一連の試料調製の際の容器への吸着についてイミプラミン (10 ng/mL) を評価しました。
その結果、非低吸着容器(他社 製PP製品)を使用した試料では、容器への吸着によりMSでの測定では検出限界以下となりました。
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Sample Imipramine (10 ng/mL) Instruments Nexera-i , LCMS-2020 Mobile Phase 10 mM Ammonium Acetate in Water : MeCN=40 : 60_Isocratic flow Flow Rate 0.2 mL/min
リバースモードでの使用を推奨します
リバースモードとは、あらかじめ採取設定容量よりも過剰にチップに吸引し、排出時に設定容量を排出する方法です。
過剰に吸引することで、チップ内壁への試料の付着に関わらず正確な設定容量の採取が容易となります。
リバースモードにて使用できる島津マイクロピペットも販売中。2-20 µL, 10-100 µL 用の 2 種類をラインナップしています。