Smart SPMEファイバー / Arrow - 特長
固相マイクロ抽出
固相マイクロ抽出(SPME)法
固相マイクロ抽出(Solid Phase Micro Extraction: SPME)法は、SPME ファイバーに揮発性成分を濃縮し、GC・GCMS に試料導入する方法で、食品、環境、化学、ライフサイエンス等の幅広い分野の分析で使用されます。
他の試料導入法と比べて、迅速・簡便に、さらに溶媒を使用せずに揮発性化合物を濃縮できるというメリットがあります。
多機能オートサンプラ AOC-6000 Plus を使用することで、サンプリングから分析、コンディショニングまで自動化することができ、さらに、Smart SPME ファイバーおよび Smart SPME Arrow の使用履歴を管理することも可能です。
(内蔵されたSmartチップを島津製作所多機能オートサンプラ「AOC-6000 Plus」が読み取ることで、シリンジタイプやファイバーの耐熱温度など固有情報や、使用期間、ストローク回数などの使用履歴を確認できます。 消耗品管理を自動化し、シリンジやファイバーの状態を正確に把握することで、採取したデータの信頼性向上が期待できます。)
※Smart SPMEファイバー / Arrowの消耗品管理機能は島津製作所「AOC-6000 Plus」のみで使用できます。
SPME とは?
SPME 法によるサンプリングには、専用の SPME ファイバーを使用します。
針内部に液相が塗布されたファイバーが収納されています。プランジャーを押し下げ、ファイバーを露出させることで、サンプルからの揮発性有機化合物を液相に濃縮させます。
その後、GC 注入口で熱脱離することで、濃縮した化合物を GC カラムに導入します。SPME 法の原理は、目的化合物のサンプルとファイバー中の液相への分配係数による移動です。そのため、ファイバーへの濃縮量を増やすためには、目的化合物にあった液相の選択やサンプルへの塩析などを行うことで、液相への分配係数を大きくすることが必要です。
さらに、抽出時間や温度、攪拌等も重要なパラメータです。
Smart SPME ファイバー・Arrow の選択
液相の選択
Smart SPME ファイバーおよびSmart SPME Arrow は、各種液相をラインナップしており、分析対象成分に最適な液相を選択でき、幅広い分析において使用できます。 図および表に、対象化合物に応じた各液相の特性を示します。Smart SPME ファイバーおよびSmart SPME Arrow のプランジャーの色は液相の種類を表しており、液相の種類を一目で判断することができます。
選択のポイント
●極性の低い揮発性化合物にはPDMS を使用します。
●低分子化合物にはCarbon WR/PDMS が効果的に濃縮します。
●極性化合物を含む揮発性化合物にはDVB/PDMS を使用します。
●高極性化合物を分析する場合は、Acrylate を使用します。
●幅広い化合物に対しては、DVB/Carbon WR/PDMS が最適です。
Smart SPME ファイバー
液相 | 分析対象 | 分子量 | 極性 | 濃縮方式 | |
---|---|---|---|---|---|
PDMS, 7μm | 無極性・高沸点化合物 | 125-600 | Non Polar | Absorption | |
PDMS, 30μm | 無極性・中沸点化合物 | 80-500 | Non Polar | Absorption | |
PDMS, 100μm | 無~中極性・揮発性化合物 | 60-275 | Non Polar | Absorption | |
Acrylate, 100μm | 極性・中沸点化合物、フェノール類 | 80-300 | Polar | Absorption | |
Carbon WR/PDMS, 120μm | 低分子・低沸点化合物 | 30-225 | Non Polar | Absorption | |
DVB/PDMS, 120μm | 極性・揮発性化合物、アミン類、アルコール類 | 60-300 | Bipolar | Absorption | |
DVB/Carbon WR/PDMS, 120μm | 幅広い揮発性化合物 | 30-300 | Bipolar | Absorption |
Smart SPME Arrow
液相 | 外径 | 分析対象 | 分子量 | 極性 | 濃縮方式 | |
---|---|---|---|---|---|---|
PDMS, 100μm | 1.1 mm / 1.5 mm | 無~中極性・揮発性化合物 | 60-275 | Non Polar | Absorption | |
Acrylate, 100μm | 1.1 mm | 極性・中沸点化合物、フェノール類 | 80-300 | Polar | Absorption | |
Carbon WR/PDMS, 120μm | 1.1 mm / 1.5 mm | 低分子・低沸点化合物 | 30-225 | Non Polar | Absorption | |
DVB/PDMS, 120μm | 1.1 mm / 1.5 mm | 極性・揮発性化合物、アミン類、アルコール類 | 60-300 | Bipolar | Absorption | |
DVB/Carbon WR/PDMS, 120μm | 1.1 mm / 1.5 mm | 幅広い揮発性化合物 | 30-300 | Bipolar | Absorption | |
PDMS, 250μm | 1.5 mm | 無~中極性・揮発性化合物 | 60-275 | Non Polar | Absorption |
抽出法の選択
SPME 法では、抽出方法で測定できる化合物や感度が変わります。したがって、分析目的によって抽出法を選択する必要があります。 気相抽出は、SPME 法で最も使用される抽出法で、液体・固体・粘性が高いサンプル等、幅広いサンプルの揮発性化合物に適応することができます。
一方で、浸漬抽出は、液体サンプルにSPME ファイバーを直接浸漬させる抽出法で、気相抽出では捕集が難しい、高極性・高沸点化合物に適応することができます。特に、Smart SPME Arrow は耐久性に優れるため、浸漬抽出に最適です。浸漬抽出の場合、PDMS の膨潤を引き起こす溶媒を使用する場合は、液相の剥離をを防ぐために、ワイドスリーブタイプの使用がおすすめです。
また、多量のマトリックスを含むサンプルや塩析した場合は、推奨された溶媒等での洗浄ステップを入れることをおすすめします。
気相抽出
●幅広い形態やマトリックスのサンプルに対応
●揮発性化合物が対象
●Smart SPME ファイバー、Smart SPME Arrow が使用可能
浸漬抽出
●液体サンプルが対象
●気化しにくい高極性・高沸点化合物を濃縮可能
●PDMS が膨潤する場合は、ワイドスリーブタイプのSmart SPME Arrow を使用
図は、各種におい成分について、 Smart SPME Arrow(PDMS, 250 μm)を用いた気相抽出(Headspace)と浸漬抽出(Direct Immersion)のレスポンスの比較を示します。
蒸気圧が低い化合物は気相抽出で高い 効率で捕集され、沸点・極性が高い成分は浸漬抽出で高い効率で捕集される傾向にあります。
ガラスインサートの選択
GC 注入口のガラスインサートは、Smart SPME ファイバーまたは Smart SPME Arrow に最適なものを選択することで、良好なピーク形状を得ることができます。Smart SPME ファイバーを使用する場合に、通常の液体注入のガラスインサートを使用すると、低沸点化合物のバンド幅が広がり、ピーク形状の広がりにつながります。そのため、SPME 法ではできるだけ内径の細いガラスインサートを使用することで、シャープなピークを得ることができます。
・Smart SPMEファイバーを使用する場合は、SPMEファイバー用の内径0.75 mmの細いガラスインサートを選択します。
・外径1.1 mm のSmart SPME Arrow を使用する場合は、SPME Arrow 用の内径1.3 mm または1.7 mm のガラスインサートを使用します。
・外径1.5 mm のSmart SPME Arrow を使用する場合は、SPME Arrow 用の内径1.7 mm のガラスインサートを使用します。